8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~3
「大変なことがあったそうだな」
「ご、ごめんなさい。僕は……」
「判断を間違えた。……そうだな」
「……はい」
王や王子の判断ミスが、周囲にどれだけ大きな影響を与えるかということは、オリバーも帝王学で学んでいる。権力を持てば持つほど、その影響は大きく、だからこそ国を治める者には知識と正しさが求められるのだと。
ちゃんと学んだはずなのに、選択を間違えた自分が情けなく恥ずかしい。
「つらかっただろう」
予想外の言葉をかけられて、オリバーは目を丸くして父親を見つめた。
「怒らないのですか?」
「叱責すべきところはある。だがそれは、お前の心が立ち直ってからだ。ここにおいで、オリバー」
オスニエルはそのたくましい腕でひょいとオリバーを持ち上げると、自分の膝の上に座らせた。
もう誰かに抱き上げられることなどなくなっていたオリバーはひどく恥ずかしかったし、動転してしまった。
「ち、父上」
「だが、お前が身をもって判断を誤ることの怖さを知った意義は大きいと思う」
オリバーは動きを止めた。オスニエルはあえてオリバーの目は見ず、遠くを眺めた。
「誰にでも間違いはある。もちろん俺にだってある。しかもそれは、自分では正しいはずだと信じた道だ。お前だってそうだろう?」
「はい」
「だが実際はうまくいかなかった。自分の考えが浅はかだったということだ。こんなことはこれから先、いくらでも起こりうることだ。だから俺たちは、失敗から学び、考えなければならない」
オリバーは信じられなかった。オスニエルは、武力に秀で、柔軟な考えで国を繁栄へと導いていく、偉大な王だ。その父が間違えるところなど、想像つかない。
「ち、父上も間違えたことがあるのですか」
「もちろん。間違えたままずいぶん突き進んでしまった。誰も俺に意見する者などいなかったからな。フィオナと出会って、自分の考えを改めることができたんだ」
「母上が?」
オリバーは意外に思う。フィオナは見た目はたおやかだし、口調もいつも丁寧で優し気だ。