8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~3

「ああ。フィオナは怒ると怖いんだ。正論で追い詰めてくるときなんかは、この俺でも逃げ出したくなる」
「父上が?」

 大柄なオスニエルがフィオナに怒られて背中を丸めているところを想像してしまい、少しおかしくなる。

「お前の母上はすごいんだよ。実は俺は、お前が王になるには優しすぎるのではないかと悩んでいたことがある。お前が不安なのは、俺のそんな気持ちを感じ取っていたからかもしれないな」

 オリバーは思わず身をすくめる。やはり、自分は王太子としての器ではないのだ。父もそう思っていたのだと知って、心臓がはやる。

「だがな、フィオナと話して考えが変わった」
「……母上と?」

 思わず父の顔を見上げると、オスニエルもオリバーと目を合わせた。手を掴まれ、ゆっくり開かれる。

「オリバーは賢い子だ。決して王としての資質がないわけではない。優しい王が賢王と言われる時代もあるでしょう、と。確かにそうだ。戦乱の世では俺のような武闘派の王が英雄と言われるものだ。同じように平和な時代には優しく賢い王が賢王と言われるものだ。そんな時代に、俺の代で変えていけばいいだけの話だ」

 目から鱗が落ちたような衝撃に、オリバーは瞬きをする。

「え……?」
「さすがはフィオナだろう。俺も驚いた。そういう考え方の転換もあるのかと思ってな。でも、落ち着いて考えてみれば、確かにそうなのだ。優しさは美点でこそあれ、欠点ではない。俺が今英雄扱いされているのも、たまたま時代に合っていたからなのと、フィオナに出会ったからだ」
「母上に?」
「フィオナは俺に、いつも思いもかけない視点を教えてくれる」

 最後のひと言は惚気にも聞こえた。オリバーは少し笑ってしまい、笑えた自分に驚く。

「王であれば、国民すべての人生を左右する覚悟をしなければならない。もちろん、王の子であるお前も同様だ。とはいえ俺たちだって人間だ。間違うことはある。今回がそうだな。だがひとつ幸運だったことがあるとすれば、お前にはドルフがいたことだ」
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