8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~3
「父上、ごめんなさい。僕が軽率でした。望みをかなえたら、チャド……聖獣が、僕のものになってくれるんじゃないかと思ってしまったのです」
「お前はその聖獣のことをそんなに気に入ったのか?」
「違う。僕は、……アイラに嫉妬してたんだ。みんなから好かれるアイラがうらやましくて。……僕だけをみてくれる存在がいたらいいのにって思ったんだ」
「馬鹿だな。みんなお前を大切に思っているのに」
「……うん。僕……なにも見えていなかった」

 オリバーの目から一筋の涙がこぼれる。しかしそれはもう、悲しいものではなかった。
 オスニエルのくれた言葉が芯となって、オリバーは、自分の心の居場所を見つけたような気がした。
 これから先、何度迷うことがあっても、オリバーはまた立ち上がれる。

「父上、ありがとうございます」

 オリバーは自分からオスニエルに抱き着いた。オスニエルの安堵の吐息が耳に届き、オリバーはあらためてドルフに感謝した。今、父を失っていたとしたら、オリバーはきっと生きてはいけなかっただろうから。

* * *

 ひとしきり父の腕で泣いたオリバーは、ようやく自分を取り戻し、顔を上げた。
オスニエルもほっとした表情で彼の背中を叩く。

「よし、では母上とアイラにも顔を見せてやれ。ふたりとも心配しすぎでボロボロだ」
「そうなのですか?」
「ああ。アイラなんかひどかったぞ。……もう入っていいぞ」

 オスニエルは最後の言葉を、外に向かって呼びかけた。すぐに扉が開き、フィオナが入ってくる。

「オリバー」
「母上、ごめんなさい」
「いいのよ。母様もごめんね。もっとあなたの相談に、しっかり答えてあげなきゃいけなかった。安易に背中を押して、つらい目に合わせてしまったわ」

 フィオナの肩が震えていて、オリバーは自分がどれだけ心配をかけていたかを実感する。

「違うんだ。母上は何も悪くない。僕がはっきり言わなかったからだよ」

 フィオナは涙目でオリバーを抱きしめる。お腹がつかえて密着はできないが、母の柔らかさや温かさをこうして直に感じるのはひどく久しぶりな気がして、オリバーも素直に抱きしめ返す。

「……心配かけて、ごめんなさい。母様……」
「ええ」
「アイラも」

 オリバーは抱かれたまま、扉の前で立ち止まってしまっていたアイラに手を伸ばす。
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