8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~3
 名前を呼ばれた途端に、アイラの目から、涙がぶわっと噴き出した。

「お、オリバー」
「この間は、ごめん。僕、やきもち焼いていたんだ。アイラが、人気者だから」

 真っ赤な顔でアイラは首を振る。どこまでも素直なアイラが、今もオリバーはうらやましい。だけど、今日はひねくれた気分にはならなかった。

「アイラは何も悪くない。僕が勝手にいじけていただけなんだ。ごめん」

 アイラは涙をこらえながら、首を振る。

「お、オリバー、なんにもわかってないよ。オリバーがいないと、みんな喧嘩ばっかりするんだよ? 私だって。オリバーがいないと……駄目なんだから」

 震えながら、アイラはもっとなんか言おうとして口を開けたものの、涙がこぼれて我慢できなくなってしまった。
 オリバーはフィオナの腕から出て、アイラのもとに駆け寄る。

「う、うわああああん。オリバーの馬鹿! なんでそんなこと言うの。私だってみんなだって、オリバーが好きなのに!」

 小さく暴れて泣き出すアイラを抱きしめながら、オリバーは少しくすぐったい気持ちになる。こんな風に自分に愛情を示してくれる存在がいて、どうして自分はひとりのような気がしてしまったのか。

「うん。僕も。アイラが好きだよ」
「だったらぁ! 私の気持ちくらいわかってよ! バカバカバカ! バカ!」
「無茶苦茶だなぁ。アイラ」

 アイラのその素直さが、いつもうらやましかった。同時に、まっすぐに向けられる気持ちに、助けられても来たのだ。

「ねえ、アイラ。……僕が王太子でも、大丈夫だと思う?」
「当たり前! オリバーじゃなきゃ誰がするの? 私は絶対に無理だから!」
「そんなにはっきり言う?」
「だって私、わがままだもん」
「はは。アイラらしいなぁ……」

 その素直さが、アイラの魅力なのだ。しかし国を治める資質とは少し違う。
 オリバーはようやく、アイラに感じていた劣等感を消すことができた。

「悪かったな。ドルフ。疲れただろう」
『そう思うならさっさと戻るぞ』

 オリバーが落ち着いたのを見て、オスニエルが言う。
 ドルフも、長い時間を止めていたことで疲れたのか、そっけなく頷き、オスニエルを連れて戻っていった。

 そして、数分のうちに戻って来たドルフは、『今日は疲れたから誰も面倒を起こすなよ』と言い、フィオナの寝室を陣取ってしまった。
< 93 / 127 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop