8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~3
「なんか勘違いしているみたいなんだもん。困る。私は面倒くさいのが嫌いなんだよう。あのね。私はずっと、ルーデンブルグの湖でママと暮らしていたの。ママがいなくなってからはひとり。森の動物たちはいたけれど、友達って感じじゃなかった。だから、ドルフを見たとき、気づいてほしいなって思ったんだ。同じ、狼の聖獣だったから。だからフィオナのお腹の中にある、まだ誰の加護もない命に加護を与えた」
リーフェが自分のことを語るのは珍しい。オリバーは黙って、彼女の言葉の続きを待った。
「アイラやオリバーに加護を与えたのは、本当にそんな理由だけ。でも、きっかけはそうだけど、今はアイラのこともオリバーのことも好きだよ。アイラがぎゃんぎゃん泣いたり笑ったり叫んだりしているのも、うるさいけれど嫌じゃないし、オリバーが静かに私を背もたれにして本を読んでいるのも、たまに一緒に走ってくれるのも、楽しい。ふたりの役には立ててないかもしれないけど、私はちゃんと、ふたりのこと好きだよ」
「リーフェ」
「なんでオリバーが好かれてないって思っているのか知らないけど、私は好きだよ。それだけ、言っておこうと思って」
自分の態度は、もしかしてリーフェを傷つけていたのかもしれない。素直なリーフェの言動に、ようやくオリバーは自分の遠慮が人に与える影響に思い至った。
「僕だって、リーフェは好きだよ」
『じゃあもっと頼ってもいいよ。私、あんなネズミより力ある』
「……ごめん、リーフェ」
傷つけていたかもしれないなんて、今更思う自分が情けなかった。普通に近くにあった愛情に、どうして自分は気づけなかったのだろう。こんなにも多くの人から愛されていたというのに。
「みんな、こんなに僕に手を差し伸べていてくれたのに。全然気づかなかった。やっぱり僕は駄目だね」
オリバーの嘆きに、リーフェはあっけらかんと答える。
『今気づいたんだから、いいんじゃない?』
「……ぷっ」
『あ、やっと声出して笑ったね。オリバー、その方がいいよ。もっと、思っていることを口に出したら、みんなきっと、応えてくれると思う』
「うん。ありがとう、リーフェ」
かなり大きな失敗をしでかしてしまったが、ようやくオリバーは実感として思うことができた。
自分はみんなから愛されている。自分を不幸にしていたのは、心を閉ざしていた自分のせいなのだと。