悪女のレッテルを貼られた追放令嬢ですが、最恐陛下の溺愛に捕まりました【2】


 (つがい)になったから、わざわざ求愛行動をとらなくても良くなったのか、彼の中で感情が切り替わったのかはわからない。

 きっかけには心当たりがある。婚約者だった頃、王都で開かれた夜会だ。

 二ヶ月前のあの日、珍しくお酒を飲みすぎて酔っぱらってしまった私をラシルヴィスト様が介抱してくれた。

 彼のベッドに運ばれたのは覚えているのだが、その先の記憶がない。

 もしかしてあの日、とんでもない醜態を晒した……?

 あとで不安に思って尋ねたけれど、彼の反応は薄く、「次は酔いすぎるな」とたしなめられた程度だ。

 それから部屋で過ごすときも、体を重ねる夜も、一度も噛まれていない。

 私が今日古城に来たのは、懐かしい顔ぶれに挨拶をすることだけが目的ではなかった。


「ドミニコラさん。古城の書庫には様々な文献がありますよね?」

「そうだね。古いものもあるし、新しいものも仕入れているよ」

「獣人たちの習性……特に、ヴォルランについて記載のある書物はありますか?」


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