悪女のレッテルを貼られた追放令嬢ですが、最恐陛下の溺愛に捕まりました【2】


「王子は無事ですよ。ほら、指名手配犯もこのとおり」

「彼がリマイナ草を売りさばいていた商人ですか」

「ええ。地方へ逃亡して金目のものを盗み、違法植物の購入資金を稼いでいたようです」


 続々と駆けつける獣人の騎士に、双子は胸をなで下ろした。安心感が広がって体の力が抜ける。まだ指先の震えは止まらない。

 人生で初めて命の危機に陥った瞬間だった。

 そのとき、双子の目の前に大きな影が落ちる。

 見上げた先に立っていたのは、氷のように冷たく鋭い目をした父だ。震えるほど怖い表情は、本気で怒っているのがわかる。


「グァォ……!」


 低い咆哮(ほうこう)に辺りの空気が振動し、その場に集まった騎士達も思わず親子へ視線を向けた。

 一瞬、時が止まったように父を見つめていた双子は、数回まばたきをする。

 やがて、弟のシルヴァンの目に涙が溢れた。


「……っ、ふぇ……っ」


 ぽろぽろと泣きだす弟を見て、遅れてヴォレンスも目に涙を浮かべた。


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