悪女のレッテルを貼られた追放令嬢ですが、最恐陛下の溺愛に捕まりました【2】
「よっ、エスターちゃん。なに読んでるの?」
「きゃっ!?」
背後から声をかけられ、びくっと体が跳ねた。
振り向いた先にいたのは騎士団長のレンテオさんだ。彼も、私の叫び声に尻尾をピンと伸ばして驚いている。
「ごめん。びっくりさせたね」
「いえ、集中していたもので……ごめんなさい」
夫の甘噛みについて調べていたなんて口が裂けても言えず、さらにはちょっと恥ずかしい悩みのために読んでいたので、余計に驚いてしまった。
レンテオさんは近隣諸国への公務があったようで、古城に偶然立ち寄ったらしい。
和気あいあいとお互いの近況を話して、楽しい時間が過ぎていく。
「そういえば、ドミニコラさんがエスターちゃんを気にかけていたけどなにかあったの?」
尋ねられて、はっとした。
猫の獣人のレンテオさんなら、ヴォルランの習性について詳しいかもしれない。以前、求愛行動を教えてくれたのも彼だ。
さすがに〝ラシルヴィスト様が甘噛みしてくれなくなった〟と直球で伝えるわけにはいかないわ。