冷酷な処刑人に一目で恋をして、殺されたはずなのに何故か時戻りしたけど、どうしても彼にまた会いたいと願った私を待つ終幕。
 新鮮な晴れた日の空気が、肺に入っていた。

 じめじめとしたカビの匂いのする地下牢で鎖に繋がれていた私は、あの時に初めて見た美しい男性に殺されたはずだった。

 けれど、ここはうららかな陽の光がさんさんと降り注ぐ、美しいサンルーム。確かに私は場所で、婚約者のリチャードとは良くお茶をしたものだった。

 殺されたと思っていたあの時と、明らかに状況が違う。もしかしたら……これは、あの女性が現れる前に過去へと戻った?

 最近流行っている物語では、聞いたことがある。主人公たちは時を越えて過去や未来を、移動するのだ。

「あの……リチャード。ルイーゼ様は、今どこにいらっしゃいますか?」

「ルイーゼ? 誰の事だ?」

 光が跳ねる美しい金髪をさらっと揺らしリチャードは、私の質問に対し、本当に不思議そうにして首を傾げた。

 そして、確信した。

 あの女性……貴族の子女を集め教育する学園で、多くの男子生徒を虜にした男爵令嬢ルイーゼ・ローランスと、彼はまだ出会っていない。

 こうして、冤罪で殺されたはずの私は、何故か時を遡り……人生を、やり直す機会を与えられた。
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