不協和音ラプソディ
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「私が誘っても断るクセに、ヘーきで欲しくなると呼ぶんだね」
「言うほど杏、俺のこと誘わないけどな」
2時間ほど前、私の誘いのLINEは既読スルーで返すくせに、まるでなにもなかったように、味噌汁が飲みたいからと、平然と誘ってきた浬。
ゆっくりと過去を振り返りながら、大切にされていない現実をよく理解して、どうすべきかを悩んで。
散々文句を言いながらも、今こうして、結局は浬の部屋にいる自分に、ため息が出る。
浬が忘れてるだけでしょ。
もうあんまり誘わないのは、断られるのがイヤだからだよ。
なんて言えずに、冷蔵庫から取り出した味噌を鍋に溶き入れる。
ゆるりゆるりと混ざり合っていく様を目にしながら、そうはならない私達を重ねてしまう。
不機嫌な私の機嫌をとるかのように、吸っていたタバコを置いて、後ろから抱きしめてくる浬を、首筋にキスを落とす浬を、突き飛ばせたらどんなに楽か。
思っても、受け入れることで満たされてしまう私は、永遠に、それを決断できないでいる。