不協和音ラプソディ
一人冷静に聞いていた彼女がふたたび口を開いたときに、いよいよ、最後が近づいてきていることを感じる。
「…んでだよ。なんで」
その予兆は、顔を歪めている浬も、もちろん感じているはずで。
なんでと言いながら、私の問いかけに対しては何一つ反論が口をついて出てこないことが、それを証明してる。
ただ、心が追いついていないだけ。
「あなたがアーティストで、才能を授かって生まれてきたからよ。その才能は、世界のために使うの」
才能。
絶対的なヒカリを宿したこの言葉が、こんなにも残酷な一面を持っていることを、私は知らなかった。
さいのう。
4文字で構成された言葉が、6畳一間の中で、私達の全てを飲み込んでいく。