不協和音ラプソディ
*
。
あれから、あっという間に3年が経った。
いっこと呼ばれていた彼女の正式名が郁子さんだということを、数年後にTVで知った。それは、浬というイチアーティストの名前が世間に知れ渡っていくのと同時だった。
郁子さんもまた、アーティストだったのだ。
プロデューサーやマネージャーかと思っていたけど、女性ドラマーで、浬の新しいバンドの一員。
だからこそあんなに、必死になって浬を引っ張りあげてくれていたのだと思う。
今となっては、TVやネット、SNSで、浬をみない日はないくらい、有名な人になってしまった。
逆にいえば、それ以外のところで、何かを知ることもない。
「…あ、また」
あの頃、幾度となく通った渋谷の駅で久しぶりに降りてみれば、交差点の大型ヴィジョンには、よく知る顔。
3年前よりも随分と垢抜けて、元々キレイな顔がさらに洗練されたせいで、あの頃の浬とは別人にさえみえる。