不協和音ラプソディ









あれから、あっという間に3年が経った。



いっこと呼ばれていた彼女の正式名が郁子さんだということを、数年後にTVで知った。それは、浬というイチアーティストの名前が世間に知れ渡っていくのと同時だった。


郁子さんもまた、アーティストだったのだ。


プロデューサーやマネージャーかと思っていたけど、女性ドラマーで、浬の新しいバンドの一員。


だからこそあんなに、必死になって浬を引っ張りあげてくれていたのだと思う。




今となっては、TVやネット、SNSで、浬をみない日はないくらい、有名な人になってしまった。


逆にいえば、それ以外のところで、何かを知ることもない。











「…あ、また」



あの頃、幾度となく通った渋谷の駅で久しぶりに降りてみれば、交差点の大型ヴィジョンには、よく知る顔。


3年前よりも随分と垢抜けて、元々キレイな顔がさらに洗練されたせいで、あの頃の浬とは別人にさえみえる。



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