初めての恋ー孤独な私を見つけてくれたー
それから15分くらいしてからインターホンが鳴った。ドアを開けると琉生が立っていたので上がってもらった。
「すみません。部屋狭くて...」「そんなことない。でも、柚らしいいい部屋だ。なんだか落ち着く」琉生はテーブル前に座った。
「コーヒーでいいですか」「ああ、でも、気を使わないで」柚歩はコーヒーを二つテーブルに置いて琉生の前に座った。
琉生はコーヒーを一口飲んでから思い切って話し出した。柚は静かに聞いていた。

「ごめんな。遅いのに押しかけて...。柚から電話で話したけどやっぱり心配で...俺、柚にかかわると弱くなってしまう。情けなくてカッコ悪いな」柚歩は小さく首を振った。

琉生は不意に部屋を見渡して、そこに小さな写真たてが置いてあるのに気づき立ち上がった。

「柚、もしかしてこれはお母さん?」「はい、そうです」写真たての前には指輪のケースがおいてあるのに琉生は気付いた。
その指輪は世界で一つしかない琉生の尊敬する人が作ったものだった。まさか、柚歩が持っているものと思わなかった。
「柚、一つ聞いてもいいかな?あのお母さんの写真立ての前にある指輪ケースってあれはどうしたの?」「え、あれは私が母から譲りうけたものです。琉生さんにはお話してないと思いますが、私には父がいません。生まれた時から父の存在を知らないんです。あれは父から渡されたんではなくて、父のお兄さんから父が母の為にデザインして作成したものをもらったとのちに母から聞きました」
「柚はお父さんがだれかはお母さんから聞いてないんだね」
琉生は少し考えこんでいた。

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