初めての恋ー孤独な私を見つけてくれたー
柚歩にとってあの頃に会った彼との思い出は大切なものだ。人付き合いが苦手なのにあの人と話したことは柚歩にとって凄く重要なことだった。
あの時のことは何年たった今でもはっきり覚えている。
「あれ、この辺から聞こえたんだと思ったのにな」その人はは大きな木の幹に座り込んでフーっと息を吐いた。
柚歩はその人が座っている幹の反対側に立ったまま息をひそめていた。

「あの子かと思ったけど違ったのかな？」その人はひとりごとを言っていた。

「ここに来たらあえるかなっと思ったけど、もう何年もたってるからそう会えないか」
その人はそっと立ち上がってあたりを見回し、デニムのお尻についた草をはらうとその場を離れた。
柚歩はその人が離れたのを見計らってその場に腰を下ろした。

その人は誰か探している様子だった。その様子を柚歩は物陰からじっと見ていた。

5年位前、小さい頃に友香とよく来ていた大好きな場所で、歌を歌っていた。
「今日こそはあのきれいな声の持ち主に会えるのかな？」いつもきれいな声で聞こえてくる歌にいつも彼は癒されていた。
でも、いつも声は聞こえてはいるが、その姿を見ることはできなかった。
でも、その日、初めて柚歩と会う事が出来た。初めて会えたことが彼は凄く嬉しかった。初めて会った柚歩は彼には凄く可憐な少女だった。背はそんなに高くはないけど、肩まで伸ばしている髪の毛は黒くて凄くきれいに手入れしてあった。

「やっと、会う事が出来たね。いつも君の声に励まされていた。ずっと会いたかったんだ。初めまして、琉生です。
君の名前も教えてもらってもいいかな？」
柚歩も小さい声で名前を伝えた。「柚歩です」「柚ちゃんね。名前教えてくれてありがとう」琉生は柚歩に微笑んだ。


< 8 / 52 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop