君がいた街
絶望
20年ぶりに帰った故郷は、昔の面影など微塵も残さず、ただ荒涼とした地を晒していた。
「なんてこと」
もとは立派な建物だった、町長の屋敷の廃墟に手をつき、俺は独りごちる。
ここがかつての夢の街、花の都だったなんて、信じられない。
そして、俺が過ごしてきた街だなんて。
記憶に残る眺めとは懸け離れた景色に、俺はしばし呆然としていた。
──こんなんじゃ、俺ん家なんて、跡形も無いかも知れないな。
ふっとそんなことを考えて、まぁ、町長のとこでさえもこんなんだしなと思いつつも、
──せっかくだ、確かめてこうじゃねぇか。
と半ばなげやりに呟くと、俺は微かな記憶を頼りに歩き出した。