君がいた街
希望

たった今までリイのいた場所に、ひとのいた気配など微塵もなくて。


もしかしたら、さっきまでのことは全て夢だったのではと錯覚しそうだ。


「好きに生きろ、か」


思いがけなかった言葉を反芻してみる。

一緒に暮らしていた頃は、指図ばかりで何も自由にしてくれなかったくせに。

それとも少しは、認めてもらえたんだろうか。


……まさかな。


これからどうしようかとしばし思いを巡らせ、ふと足元に、目を落とす。

なぜか、さっきまではなかった砂が小さく積もっていた。


リイの忘れ物、かな。


少しだけ掬ってみる。

よく乾いた海の砂のような感触が気持ちいい。


と、砂山のなかの何かやわらかいものに、不意に俺の手が触れた。


恐る恐る、山を崩してみる。


……あ。

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