君がいた街
白い花が、儚げに揺れていた。
忘れ物じゃなかった、これはきっと、贈り物だ。
小さな手に乗せていた球根に、花を咲かせていってくれたんだ。
スノードロップ。
開花時期より少しだけ早いけど、それでも確かに咲き誇っていた。
リイの残した奇跡。
空さえもどんよりとした曇り空、色彩を失ったようなこの街に、その色は眩しくて。
ああ、かつての呼び名を、この街は取り戻せる気がする。
俺の手で。
やってみても、いいかな。
カラフルで活気に溢れた夢の街、花の都。
いくらこの地が絶望に蝕まれていても、それでも希望を失うことはない。
たとえ全てを失っても、また花開くことはできるのだから。
スノードロップの花が、それを示すかのように風に揺られ揺れる。