君がいた街
……どれくらい、そうしていたのだろう。
ふいに風向きが変わって、それに乗ってどこかから、澄んだ歌声が聴こえてきた。
今まで全く無音だったからか、やけに響いて聴こえたそれは、なぜか俺の心に溶け込んで。
気付くと。
俺は引き寄せられるように、ただひたすらに、音に向かって歩いていた。
いや、実際引き寄せられていたのかもしれない。
ほとんど無意識だった、ただ音に導かれるように、風に運ばれてくる旋律を追いかけた。
……と。
目に入るのは、空の蒼と、廃墟のくすんだ灰色と、地面の土色だけだったのに。
突然、鮮やかな白が視界に飛び込んできた。