君がいた街
なんてことをつらつらと考えながらぼんやりしていると、
「そなたは、……旅の者か」
少女が呟くように言った。さっきの歌声には程遠い、掠れたハスキーボイスで。
「そうだが。きみは?」
不思議に思いつつも普通に答える。
すると、彼女は可笑しそうに笑った。
「アタシは、リイ。この……、かつての花の都の唯一の住人さ」
そう言って彼女、リイは再び微かに笑う。ひとりこの土地を離れられない自分を、嘲るように。
「他の人たちは……?」
恐る恐る、俺が訊くと、
「皆、逃げたよ。もしくは死んだ。この都では、最早誰も生きられないんだ」
少し寂しそうに瞳を翳らせて教えてくれた。
「だけど、きみは生きてるじゃないか」