君がいた街

……そんなこんなで、俺は旅先でのあれこれを、リイに話す羽目になった。


話し終えたら、取って喰われるんじゃないか。なんていう恐怖を幽かに抱きつつ。


それでもいつか、終わりはやってくる。

だいたい俺は、作り話なんてできるほど器用な人間じゃない。


「……で、俺はここに来たんだ。だけど、まさか、こんなになってるなんてな……」


俺が話し終え、リイの方を見やると、彼女はなぜか、深く考えこむような顔をしていた。

いつの間にか、腕を掴む手も緩んでいる。


そっと振りほどき、音もなく立ち去ろうとしてみたが、はっと顔を上げたリイに見つかって、さっき以上に強く腕を掴まれた。

だからって、何をするわけでもない。

取って喰われるわけでもない。


……何なんだ?

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