君がいた街
「そなた……」
しばらくして、リイは何かを訊きたげに、俺を見つめた。
だけどふいに視線を逸らすと、
「アタシの話も、聞いてくれないか」
強い口調に似合わない、すがるような上目遣いで、俺の腕を強く握ったまま、言った。
「あ……あぁ」
戸惑いながらも、俺は頷く。
リイは安堵したように息をつき、もう俺は逃げないだろうと判断したのか、掴んでいた手をようやくほどいた。
どれだけ強く掴んでたんだろう。
俺の腕には、くっきりと赤い跡が残っていた。
……寂しかったんだろうか。
ずっと独りで、歌を歌って。
さっきのすがるような目を思い出しながら、そんなことを思った。