たとえ世界を敵にまわしても
プロローグ
裕太side
人間という生き物は、本当に嫌な生き物だ。
自分が得をするのか、損をするのか……。
もしくは、勝ち組なのか、負け組なのか……。
そんなどうでもいいことばっかりを考えて毎日を過ごしている。
僕の家族は、
『裕太、お前も勝ち組になれ!!』
『あなたは、他の人たちとは違うのよ。常に人の上に立っていなさい!!』
『お兄様は、次期姫野家の当主なのだから、人付き合いも考えなくっちゃね。』
と言う。そして周りの人たちも、
『あいつはお金持ちだから、一緒にいると得するぜ。』
『姫野グループのご子息に取り入れられることができたら、我が社も安泰《あんたい》だな。』
と言う。最初は信頼していた人たちからそんな言葉を言われた時は、本当にショックだった。だけどそれと同時に、
『こういう人間もいるんだ。』
ということを知った。
『僕に近づいてくる人たちは、大抵こういう人が多い。』
そう思っていた。あの日君と出会うまでは……。
若菜side
あの日、あなたと出会って私は、生まれて初めての恋をした。
あなたの笑顔が、姿が、私の胸を熱くさせる。
でもあなたは、私のことなんて、ただの友達としか見ていない……。
私の気持ちは、一方通行なまま……。
私のこの想いは、どこへ持っていけばいいのだろう……。
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