たとえ世界を敵にまわしても
第一話 姫野家の朝
裕太side
「裕太様、裕太お坊っちゃま。朝ですよ、早く起きてくださいませ。」
その声にうっすらと目を開け、左サイドを見ると、ツヤのある黒髪をオールバックにし、黒のタキシード服に身を包んだ二十代前半ぐらいの男性が立っていた。
彼の名前は、梅津耕助《うめづこうすけ》。
この家で住み込みで働いている執事兼運転手だ。
「おはよう、梅津。」
「おはようございます、裕太お坊っちゃま。旦那様たちがお待ちです。」
「分かった、すぐに行くよ。」
「かしこまりました。」
梅津は僕に向かって恭しく頭を下げると、部屋から出て行った。
僕はベッドから起き上がると、パジャマから真新しい制服に着替える。
僕の名前は姫野裕太《ひめのゆうた》。十五歳。
七月七日生まれのかに座。血液型はA型。
今日から私立応慶学院後頭部《しりつおうけいがくおんこうとうぶ》の一年生になる。
「よしっ!!準備完了!!」
黒と黄色のネクタイをキュッと締め、水色のブレザーに袖《そで》を通すと、念入りに全身をチェックする。
「うん。乱れているところはなし!完璧だ!!」