秘密の癒しチートがバレたら、女嫌い王太子の専属女官(※その実態はお妃候補)に任命されました!
「今回の代金はいらないよ。僕から君に、プレゼントだ」
「とんでもない、もらえないわ!」
 ふたりのやり取りを苦い思いで聞いていた。
「プレゼントは、これが最初で最後だ。次からは、ちゃんと商売させてもらうから、今回の鍼だけはもらっておいて欲しい」
「……んー、わかった。それじゃあ、今回はお言葉に甘えさせてもらうわ。私がこの世界で鍼の施術を行えてるのは、あなたの協力があってこそよ。ブローム、どうかこれからもよろしくね。素晴らしい鍼をありがとう!」
「またいつでも待ってるよ」
「ええ! またお願いしにくるわね。……あ、おじさまにもお暇のご挨拶をしてくるわね」
 メイサは最後に、工房の奥で作業するブロームの父親に、帰りの挨拶をしにいった。
「鍼の提供によって、彼女を支えていきたい。これが僕の望みだ」
 ブロームはメイサのうしろ姿を眺めながら、ポツリと口にした。
「ふん。ならば、わざわざプレゼントなどとキザなことをせず、代金を取ればいいだろうに」
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