秘密の癒しチートがバレたら、女嫌い王太子の専属女官(※その実態はお妃候補)に任命されました!
第四章
アズフィール様の専属女官として王宮にやって来て一週間が経った。
──コン、コン。
「アズフィール様、おはようございます」
私の役目は、毎朝アズフィール様を起こすことから始まる。とはいえ、私が起こしにいくと、アズフィール様は既に起きていることがほとんど。大抵このタイミングで中から「どうぞ」と返事があった。
……あら、珍しい。返事がないわ。
どうやらアズフィール様は、まだ眠っているらしい。
「失礼します」
私はひと声かけて、扉を開く。
アズフィール様の寝室は、私が与えられた部屋の隣だった。室内は私の部屋よりも少し広く、壁や支柱の細部こそ職人の技がいきた凝った趣向になっていたが、必要最低限の家具しか置かれておらず質素だった。
アズフィール様は王子でありながら、日頃から贅を好まず、その暮らしぶりは慎ましやかだ。
窓辺に置かれたベッドに歩いていくと、掛け布団が人型に盛り上がっていた。