秘密の癒しチートがバレたら、女嫌い王太子の専属女官(※その実態はお妃候補)に任命されました!
 爪? アズフィール様は苦しげに呻き、首のあたりをしきりに掻きむしる。普段の彼からは想像できないほど、追い詰められた様子だった。
 ……なに? アズフィール様はいったいなににこうも怯えているの?
「苦しいっ、……イザベラ姉様、やめてぇええっ──」
 鬼気迫ったアズフィール様の声を耳にして、私は咄嗟に首を掻く彼の手を握っていた。
「アズフィール様、大丈夫よ! 誰もあなたを傷つけない。私がいるわ!」
 グッと両手で包み込んで告げる。直後、アズフィール様は私の手をギュッと握り返し、パチッと目を開いた。
「っ、……あぁ。メイサか、おはよう」
 アズフィール様は私に視線を留めると、安心したように強張っていた表情をフッと緩ませた。
「おはようございます、アズフィール様。あの、ひどくうなされていたようだったけど……」
「うなされて……? あぁ、そうだったのか。どうりで体が重いわけだ」
 どうやらアズフィール様は、自分が夢にうなされていたことを覚えていないようだった。
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