秘密の癒しチートがバレたら、女嫌い王太子の専属女官(※その実態はお妃候補)に任命されました!
 アルバートさんがいなくなるとすぐに給仕係がやって来て、温かな湯気を立てる出来立ての料理を並べてくれる。
「後は俺たちでやる。下がっていい」
「かしこまりました」
 ひと通り料理が並ぶと、アズフィール様は食堂に控える給仕係を早々に下がらせてしまう。
 そうして慣れた手つきで自らトングを手に取って尋ねる。
「メイサ、パンはどれにする」
「えぇっと、クロワッサンをいただくわ」
「よし」
 アズフィール様はパン籠から焼きたてのクロワッサンを掴み、私のお皿にのせてくれる。自分の皿にも、私と同じクロワッサンを選んでのせていた。
「ありがとう」
 本来、その役目は私がするべきだと思うのだが、アズフィール様は何度言っても絶対にトングを渡してくれない。そのため、私は最初の朝食からずっと、アズフィール様にパンやら飲み物やら甲斐甲斐しく世話されてしまっていた。
 アズフィール様いわく、「俺がやりたい」らしいけれど……。
「温かいうちに食べよう」
「ええ。いただきます」
< 139 / 340 >

この作品をシェア

pagetop