秘密の癒しチートがバレたら、女嫌い王太子の専属女官（※その実態はお妃候補）に任命されました！

　アズフィール様に声をかけられて、ぼんやりと考え事をしていた私はハッとした。
「とんでもない。シェフのオムレツは文句なしに絶品よ。もちろん、焼きたてのクロワッサンもサクサクでとっても美味しいわ」
　私は慌てて答え、右手に持っていたクロワッサンをパクリと口にした。
　事実、王宮シェフの料理はほっぺたが落っこちてしまう美味しさ。頬張っていると、自ずと笑みが浮かぶ。
「そうか」
　そんな私の様子を見て、アズフィール様は満足そうに頷いた。
「……メイサ、ひとつ頼んでもいいだろうか」
　粗方食べ終えたタイミングで、アズフィール様が遠慮がちに切り出した。
「なにかしら？」
「今晩もまた夜会がある。若者の交流のための、カジュアルな立食形式の会だ。俺のパートナーとして、そこに参加してもらいたい」
　まさかの申し出に、アズフィール様を見つめたままパチパチと目を瞬く。