秘密の癒しチートがバレたら、女嫌い王太子の専属女官(※その実態はお妃候補)に任命されました!
「連夜、令嬢らに囲まれて楽しくもない会話や食事をするのは苦行だ。特に昨夜は踊りたくもないダンスをずいぶんと踊らされ、正直堪えていてな」
 アズフィール様は苦笑して続けた。
 ……なるほど。アズフィール様は私を令嬢除けにしたいのだ。
 たしかに、あんな悪夢にうなされるほどなのだ。アズフィール様は昨日の舞踏会でひどく消耗したのだろう。それが連日となれば、たしかに心身共にキツイだろう。
 王宮で一週間を過ごし、なんとなくわかっていた。……アズフィール様はたぶん、女性があまり得意じゃない。アズフィール様自身『踊りたくもないダンス』と表現していたが、特に女性との接触が苦手のようだ。
 私は以前、アズフィール様が軍務大臣のお嬢さんから差し入れを受け取っている場面をたまたま目にしている。彼女の手が腕に触れた瞬間、アズフィール様のポーカーフェイスは崩れなかったけれど、纏う空気がピリッと張り詰めたように感じた。
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