秘密の癒しチートがバレたら、女嫌い王太子の専属女官(※その実態はお妃候補)に任命されました!
 しばらく歩くと、前方に可愛らしい緑のトンネルを見つけた。十メートルほどの長さのトンネルは、バラの蔦が伝ったアーチを等間隔に立てて作られていた。
 ……わぁ、可愛い! あそこからバラ園に続いているんだわ!
 私は足を速め、バラ園の入口となるトンネルへと踏み出した。
 ぐるりと見回すと、アーチを伝うバラはいくつもの蕾をつけていた。今はまだ固く閉ざされたこの蕾が一斉に花開いたら、どんなにか美しいだろう。
 ……開花したら、絶対にまた見に来なくっちゃ。そうだわ、アズフィール様も誘ってみようかしら。
 そんなことを考えながら、トンネルの下をくぐっていく。
 ……あら? 誰か先客がいるみたい。こんなに早くから見学者かしら。
 間もなくトンネルを抜けようかというところで、園内から聞こえてくる話し声に気づく。声の方に目線を向けると、蔦の隙間から覗く園内に男女連れの姿を認めた。
 王宮内や庭を含めた付属施設は王族や従業者の他、謁見などで訪れた者も許可を得て見学が可能だった。
< 174 / 340 >

この作品をシェア

pagetop