秘密の癒しチートがバレたら、女嫌い王太子の専属女官（※その実態はお妃候補）に任命されました！

　前世の日本では、年齢不詳の女性に対しても用いられた言葉だが、イザベラ様も例外ではない。アズフィール様の十歳上、今年二十八歳のイザベラ様には、純粋無垢と老獪を内包した不気味さがあった。
　……だけど、イザベラ様以上にもっと不気味なのはセルジュかもしれない。
　三百六十度どこから見ても包容力と優しさにあふれる騎士にしか見えない彼が、私にはどうしてか恐ろしく感じた。
　その後はバラ園を迂回して散策を続けたけれど、萌ゆる緑の美しい庭にもいまひとつ集中しきれないままだった。結局、当初の予定よりだいぶ早く王宮へと戻ったのだった。

　その日の晩。
「アズフィール様、熱くない？」
「あぁ、問題ない」
　私は就寝前のアズフィール様の肩にお灸を据えていた。
　アズフィール様は年若く、武芸に秀でたその体は隙なく鍛え上げられて屈強だ。剣戟訓練の後に筋肉痛になることはあるらしいが、肩凝りや腰痛といった不調とは無縁に過ごしてきたそうだ。