秘密の癒しチートがバレたら、女嫌い王太子の専属女官(※その実態はお妃候補)に任命されました!
 こんなふうに、本来なら鍼灸の施術には最も遠い場所にいるアズフィール様だが、なぜか毎晩私に鍼灸マッサージいずれかの施術を所望してくる。
 明確な患部がないリラクゼーション目的なので、私はだいだいマッサージを行っていた。それが珍しく、今日は肩が張ると言うのでお灸をしているのだ。
「珍しくお疲れね」
「まったくだ。父上がいきなり大量の政務書類を送りつけてきて、堪ったものではない」
 どうやら国王陛下は、来週、王太子として正式に国内外に宣明するのを前に、移譲可能な政務を徐々にアズフィール様に任せようとしているらしかった。
「それだけ期待されているのよ」
「どうだかな。父上も、あれでなかなかの狸だ。身代わりを立てて、王宮から姿をくらましたことは一度や二度ではない。これを機に、体よく俺に政務を押し付けようという魂胆が透けて見えるぞ」
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