秘密の癒しチートがバレたら、女嫌い王太子の専属女官(※その実態はお妃候補)に任命されました!
 ぇええ!? なんでここで、さらに泣くのぉ?
 顔をクシャクシャにして泣きじゃくるカミラの肩を、私はため息交じりにポンポンと叩いて慰めてやった。
 面倒くさいと呆れる反面、澄ました笑顔の仮面の下にすべての感情を押し込めた令嬢より、よほど好感を持っている自分がいた。カミラは泣き止んだ後もなかなか私の側を離れようとしなかったので、乾燥ラベンダーの粉砕を一緒に手伝ってもらった。

 その日の晩。
「なぁメイサ、今日の灸はいつもとは違う香りがするな。心が綻ぶような、優しい匂いだ」
「実は、今日のお灸はね──」
 お灸の香りの違いに気づいたアズフィール様が尋ねてきたので、私はカミラと一緒に用意したラベンダーを加えたもぐさであることを伝えた。アズフィール様はリラックスした表情から一転、物凄く怪訝そうな顔をしていた。
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