秘密の癒しチートがバレたら、女嫌い王太子の専属女官(※その実態はお妃候補)に任命されました!
第六章

 立太子の礼を翌日に控えた朝。
 私は自分の部屋のベランダから王宮の前庭を見下ろしていた。
 眼下に臨む王宮前には、国王夫妻やイザベラ様、神官長、祖父をはじめとする主要大臣らが、エイル神殿に向けて出発するアズフィール様の見送りに立っていた。皆は王宮に背中を向けて立っており表情などはわからないが、正装に身を包んで一同が整列した様は壮観だった。
 ……やっぱり、前庭からの見送りは遠慮して正解だったわ。
 アズフィール様からは、庭から見送って欲しいと言われたが、いち女官である私がそうそうたる面々と一緒に王宮前に並んで見送るのはどうにも憚られ、この場所を選んだ。
 アズフィール様は皆に一礼してアポロンに跨ると、颯爽と空に飛び立つ。
 アズフィール様は密林の麓の村までアポロンで乗り付けるが、その先はひとり徒歩で神殿を目指すことになる。厚地のマントに革の長靴、腰には剣を佩いての重装備だった。
「いってらっしゃい。気をつけて」
< 211 / 340 >

この作品をシェア

pagetop