秘密の癒しチートがバレたら、女嫌い王太子の専属女官(※その実態はお妃候補)に任命されました!
 ヴァーデン王子は黒みがかった茶色の目で真っ直ぐに私を見据え、迷いのない口調で言い切った。
 その目に宿る意思の強さに驚くと同時に、間近に見る彼の瞳の色が、私のそれにとてもよく似ていることに気づく。頑なで言い出したら聞かないところも、なんだか自分自身を見ているような、不思議な心地がした。
「……ジジ、ありがとう。飛んでいいわ」
「ありがとう、メイサ! やっと私を連れて行く気になったようだね」
「よく言うわ。置いて行こうとしたって、聞く気なんてないくせに」
「はははっ、たしかに。それもそうだ」
 私がわざと唇を尖らせると、ヴァーデン王子は朗らかな笑みをこぼした。
 ……ヴァーデン王子という人は、なんだか不思議だ。
「それで、なにがあったの? もちろん、ここで知り得た秘密は厳守すると約束する。ここにいる私は、ウォールド王国の王子ではなく、アズフィールの親友のヴァーデンだ。アズフィールの無事を願う心は、君と同じ。どうかアズフィールのために協力させてくれ」
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