秘密の癒しチートがバレたら、女嫌い王太子の専属女官(※その実態はお妃候補)に任命されました!
「ただし、姑息な手段でアズフィールを追い落とそうとする輩に、到底王位は相応しくない。私個人としては、エイル神聖王国の将来の王は、やはりアズフィールであってほしいね」
 なんとなくだが、ヴァーデン王子は黒幕に察しがついているのかもしれない。
「はい」
 私はヴァーデン王子の意見に頷いて同意した。
 ……私にきょうだいはいないけど、もし兄がいたらこんな感じなのかもしれない。
 ヴァーデン王子の瞳に映る自分を見つめながら、おぼろげにそんなことを思った。

***

 エイル神殿への道程は順調だった。
 金色ドラゴンの中でもアポロンの飛行速度は群を抜いて速く、予定より一時間以上も早く目的地に到着した。俺はアポロンを麓の村に残し、ひとり鬱屈と木々が茂る林の中へと足を踏み入れた。
 ……なんだ? なんとなく嫌な気配がするな。
 しばらく進んだところで、肌にピリッとするような不快感を覚えた。俺は全身の神経を集中させて、注意深く周囲を探る。
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