秘密の癒しチートがバレたら、女嫌い王太子の専属女官(※その実態はお妃候補)に任命されました!
 あの経験が、今もすべてに活きている。生きるために最善の判断を、俺はいつだって瞬時に下すことができる。だから俺は、ちょっとやそっとのことではやられない。足跡を残すような程度の低い刺客も、俺の敵ではない。傲りでなく、俺はそれだけの力をたゆまぬ努力によって身につけてきたのだ。
 ……それにしても、俺を亡き者にしようと狙うのはいったい誰だ? そもそも国内に、俺の立太子の礼を阻みたい者などいるのか?
 男子の王位継承を守り抜いてきたエイル神聖王国にとって、俺の王位継承──ひいてはその前段階とも言える王太子宣明は悲願と言える。両親や姉、大臣らは皆、この日を心待ちにしていたし、当然、国民も沸きに沸いている。
 ……可能性があるとすれば、エイル神信仰に反対する西の山岳部族か。いや、それよりはエイル神聖王国の混乱を狙う隣国エルラーダ公国……ふむ、どちらもピンとこないな。
 いろいろ考えを巡らせるも、肝心の犯人については皆目見当がつかなかった。
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