秘密の癒しチートがバレたら、女嫌い王太子の専属女官(※その実態はお妃候補)に任命されました!
 俺は最後に女神像に一礼し、神殿を後にした。

 そうして密林の道なき道を進みながら、おもむろに空を仰いだ。
 ……ふむ、アポロンに約束した時間までまだ間があるな。
 太陽の位置はまだ、一番高いところに届いていない。これなら余裕で、隠れている刺客を捕まえて帰れそうだな。
 俺は刺客を捜すため、沢の方に足を向けた。
「いやぁああっ!!」
 なっ!? メイサの声か!?
 当初の進行ルートである沢の近くに差し掛かったところで、なぜかメイサの悲鳴を聞いた。耳にした瞬間にはもう、声のした方に駆け出していた。
 ……あれは、ヴァーデンか!?
 木々の隙間から、ヴァーデンが引け引けの腰で剣を構えて背中にメイサを庇い、四人の敵に囲まれているのが見えた。パッと見た限り、ふたりに怪我などはなさそうだ。ついでに素早く周囲を探るが、ここにいる四人以外の気配はない。
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