秘密の癒しチートがバレたら、女嫌い王太子の専属女官(※その実態はお妃候補)に任命されました!
 俺は瞬間的に、懐に忍ばせていた二本のナイフを敵の頸動脈目がけて放つ。同時に、腰の剣を抜いて木々の隙間を割って飛び出し、渾身のひと振りで残るふたりの敵を叩き切る。ここまで、瞬きをするくらいのほんの数秒のこと。
 流れ作業的に四名の絶命を確認し、すかさずメイサとヴァーデンに問う。
「ふたりとも無事か!? 怪我は!?」
 ふたりは地面にへたり込み、呆気に取られたような表情で俺と骸となって転がる刺客を交互に見つめていた。ふたりから返事はなかったが、特に怪我などはなさそうで、俺は安堵の胸を撫で下ろした。
 ……おっと、いかん。いつまでもメイサの前に晒しておいていいものではない。彼女の目が汚れてしまう。
 俺は素早く刺客の体からマントを剥ぎ取り、メイサの視界から隠すよう被せていく。四体目にマントを被せたところで、ヴァーデンが震える唇を開いた。
「……おい、アズフィール。その強さは、おかしいだろう」
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