秘密の癒しチートがバレたら、女嫌い王太子の専属女官(※その実態はお妃候補)に任命されました!
「ん? お前こそ、以前剣の腕について『負け知らずだ』と豪語していたというのに、なんだあのへっぴり腰は? 素人ばりに腰が引けていたぞ。ずいぶんと話を盛ったものだな」
「違う! 高等学院の剣術大会レベルであれば、私とて敵なしだ。お前の腕がおかしいんだ!」
 ヴァーデンは衝撃から立ち直ったようで、俺に向かって息巻いた。
 たしかに、ヴァーデンの言はそれなりに筋が通っていた。俺の腕が学院で習うたしなみのレベルを超えているのだ。
「まぁ、一理あるな」
「まったく、君ってやつは本当に末恐ろしい男だよ。その様子だと、もう水も汲み終わっているのだろう?」
「あぁ、神殿にはもう行ってきた。水はここにある」
 俺は小瓶をしまった懐のあたりを示しながら答えた。
「やれやれ。君を助けに来たはずが、逆に助けられてしまうとはな。これでは私たちはいったいなんのために来たのかわからんな」
 ヴァーデンが肩を落としてこぼした『助けに来た』の台詞に、ピクリと肩が揺れた。
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