秘密の癒しチートがバレたら、女嫌い王太子の専属女官(※その実態はお妃候補)に任命されました!
 俺はメイサの悲鳴を聞き、心臓が止まりそうになった。そうしてヴァーデンの背中に庇われたメイサを見つけた時、彼女の無事にホッするのと同時に、苦い思いが胸に湧いた。
 メイサがこんなところまでやって来るには、なにかしらの理由があったに違いない。もしかすると、彼女の行動には刺客の件が関わっているのかもしれないと理性の部分でわかっていた。しかし、メイサが他の男を頼り、その男とふたりでやって来た事実が俺を苛立たせ不快にさせていた。
「……ところで、ふたりはどうしてこんなところに?」
 尋ねる声は、自ずと低くなり、僅かに険を帯びていた。
 ……俺はこんな状況でなにをこだわっているんだ!?
 ちゃんと頭ではわかっているのに、メイサのこととなると、ちっとも冷静でいられない。なんと狭量で嫉妬深い、情けない男だ……。
 自分で自分が情けなく、俺はワシワシと頭を掻きながら視線を落とした。
 ──タタタッ。──バフッ。
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