秘密の癒しチートがバレたら、女嫌い王太子の専属女官(※その実態はお妃候補)に任命されました!
 アズフィール様の提案にヴァーデン王子がすかさず反応したが、アズフィール様の顔を見た瞬間、なぜか王子はビクンと肩を揺らした。そうしてひどく慌てた様子で前言を覆し、自身のひとり乗りを主張した。私の位置からはちょうど死角になっており、アズフィール様がどんな表情をしていたのかは見えなかった。
 ……突然ひとり乗りを訴えてくるなんて、ヘンなヴァーデン王子。
 ともあれ、よく訓練されていて気性も優しいジジは、私が頼めば初対面の人でも嫌がらずその背に乗せてくれる。特にヴァーデン王子は往路でも乗せているから、彼ひとりでも快く乗せてくれるだろう。
「ヴァーデン王子がそんなにひとり乗りがしたいなら、もちろん構わないけれど」
「ありがとう、メイサ嬢! これで命が繋がっ……いや、楽しい空の旅が満喫できそうだ!」
 ヴァーデン王子は胸に手をあてて、大仰なくらいホッとした様子をみせていた。
「アズフィール様。そういうわけで、申し訳ないけれど帰りはアポロンに同乗させてもらうわね」
「ああ」
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