秘密の癒しチートがバレたら、女嫌い王太子の専属女官(※その実態はお妃候補)に任命されました!
 アズフィール様はヴァーデン王子から私に目線を戻すと、満面の笑みで頷いた。
「アポロンは村の端の川辺で待たせている」
「あら、私のドラゴンも川の近くにいるはずよ」
「そうか」
 アズフィール様の神殿参拝は公式に告示していなかったが、麓の村に帰り着くと、村長の他、村の有力者数人がアズフィール様の出迎えに立っていた。
 アズフィール様は全員に向け、滞りなく秘泉の水を汲み終えたことを報告した。そうして去り際、アズフィール様は村長だけを呼び寄せると、二、三耳打ちした。村長は一瞬だけハッと目を見張り、すぐに表情を引きしめて応えていた。
 ……おそらく、アズフィール様は刺客の収容など、秘密裏に事を進めておくように頼んだのだろう。
 その後、私たちはすぐに村の端の川辺に向かった。すると、草場の中に気持ち良さそうに体を伏せた金、銀二色の背中が見えてきた。
 どうやら二匹は意気投合したらしかった。
「アポロン!」
「ギュァ」
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