秘密の癒しチートがバレたら、女嫌い王太子の専属女官(※その実態はお妃候補)に任命されました!
 アズフィール様が手前で背中を丸めていたアポロンに呼び掛けると、アポロンは龍首を上げてこちらを振り返った。
「ジジー、お待たせ」
 続いて私も、アポロンの奥にいるジジに向かって声を張る。
「ジジ……?」
 なぜか隣で、アズフィール様が怪訝そうな声をあげた。
「キュガァ」
「なっ!? お前は、あの時のドラゴンじゃないか……!」
 ジジが返事をしながら体勢を起こすと、アズフィール様はひどく驚いた様子でジジを仰ぎ見た。
「なに? 『あの時の』って、もしかしてアズフィール様はジジを知っているの?」
「ああ、忘れもしないさ。あれは十年前。幼い俺が木の洞に入って遊んでいたら、斜面を落ちてきた岩で入口を塞がれて、閉じ込められてしまったことがあった。その時、尾っぽで岩を割って、俺を助けてくれたのがこいつだ。居合わせた少年が『ジジ』と呼んでいたし、間違いない!」
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