秘密の癒しチートがバレたら、女嫌い王太子の専属女官(※その実態はお妃候補)に任命されました!
 俺にとって、姉は血を分けた家族であり、信頼に足る相手だったのだ。そんな中で聞かされた姉の裏切りは、あまりにも衝撃的で、これからいったいなにを信じていいのかわからなくなった。
 虚無感と絶望が心を支配して、世界が漆黒に塗られていくかのような錯覚に見舞われた。一寸先も見通せぬ闇が、俺の心をじわじわと蝕んでいくのを感じていた。
 だが、そんな闇にメイサがひと筋の明かりを灯した。彼女の手の温もりと優しさが絶望に囚われかけていた俺を引き戻し、まろやかに包み込んだ。メイサが俺の心を支え、正しい目で未来を見つめる強さを分け与えてくれたのだ。
「メイサ。君はまさしく、俺の女神だな」
「? ごめんなさい、アズフィール様。今、なにか言った?」
 口内でつぶやいたつもりが、小さく声に出てしまっていたようで、メイサが首を巡らせて俺を振り返った。
「君に助けられたと、そう言ったのさ。俺に刺客を差し向けたのが姉と知り、なかなか平静ではいられなかった。君のおかげで、俺は心を保つことができた」
< 254 / 340 >

この作品をシェア

pagetop