秘密の癒しチートがバレたら、女嫌い王太子の専属女官(※その実態はお妃候補)に任命されました!
「今のって、いったいどういうこと?」
 ……ううん、どうもこうもない。アズフィール様は『加護を俺に分け与えてくれ』と、そう言っていた。
 私の治癒チートを知る彼は、その延長で何某かの御利益を期待し、抱擁という手段をとったに違いない。
「……でも、最後に髪を撫でた時、まるで恋人にでもするみたな甘い笑みを浮かべていたわ」
 ただの専属女官にするには親密すぎるアズフィール様の言動が私の心を乱した。
 時間が経っても、胸の高鳴りはなかなか静まってくれなかった。

 私は立太子の礼の開催に三十分ほど余裕をみて、自室を後にした。
 今日はアズフィール様の手配により、祖父母の隣に私の席が用意されていた。私も今日ばかりは祝賀に相応しい装いに身を包み、広間に続く廊下を歩いていた。
 扉の前に着くと一旦足を止め、広間の中を覗く。
 ……わぁ、華やかね!
 広間の中は、祝賀モード一色だった。
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