秘密の癒しチートがバレたら、女嫌い王太子の専属女官(※その実態はお妃候補)に任命されました!
 開始時間にはまだ間があったが、各国から招いた王侯貴族や高官らが早々と集いはじめており、歓談に花を咲かせていた。
 王様に普段は離宮で静養中の王妃様、降嫁した王女様方もすでに来ていて、大広間に到着した賓客の歓待にあたっていた。その中には、イザベラ様の姿もあった。
 少なくとも表面上は、どこを見ても王家の面々に軋轢は微塵も感じられず、円満そのもの。昨日のうちにアズフィール様が、国王様にだけは内々に事情を伝えているはずだったが、王様の表情も威風を感じさせつつも温和そのものだった。
 ……あら? あのお顔、どこかで見たことがあるような……?
 陛下のご尊顔をこんなに間近に拝するは初めてのことだったが、どことなく既視感を覚えた。
 私が不思議に思って首を捻っていると、後ろから声をかけられる。
「やぁ、メイサ嬢」
「……ヴァーデン王子!」
 振り返ると、正装に身を包んだヴァーデン王子が立っていた。
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