秘密の癒しチートがバレたら、女嫌い王太子の専属女官(※その実態はお妃候補)に任命されました!
「辛かったわね。アズフィール様も、それに王妃様やご家族も」
「だが、これですべて決着がついた。……これでいいんだ」
 私には、アズフィール様が無理矢理自分自身を納得させようとしているように感じた。裏を返せば、彼は胸に大きなしこりを抱えたままということなのだろう。
「アズフィール様……」
「……メイサ、君は温かいな」
「あっ?」
 アズフィール様はフッと口もとを緩めると、体を傾けて私の前肩の辺りにぽふんと頭を預けた。
 彼の髪が頬を掠め、首筋に吐息がかかる。鼻腔には、香水と汗が混じったような艶めかしい香りがして、とてもドキドキした。
 私は内心の動揺を抑え、アズフィール様の丸まった肩に腕を回し、労わるようにそっとさする。すると彼は、甘えるように、さらに頭を寄せた。
「君に触れていると、ささくれだった心が凪いでいく。……もう少し、このままで」
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