秘密の癒しチートがバレたら、女嫌い王太子の専属女官(※その実態はお妃候補)に任命されました!
 あまりの恥ずしさに男性を直視できず、俯き加減のまま早口で答える。
「ところで、どうしてあなたがここに? その、もう出歩いたりして大丈夫なの?」
 私は続けて、ずっと気になっていたことを尋ねた。
 男性は、怪我を負った左肩を固定したり吊ったりはしていないし、特に庇う素振りもない。しかし怪我はそれなりに深かったはず。もう普段通りにしていて、大丈夫なのだろうか。
「アズフィール様」
 私の問いかけに男性が答えるよりも一瞬早く、一歩分の距離を置いて私たちのやり取りを見つめていた祖父が歩み寄ってきて口を開いた。
「もしや、うちのメイサをご存知でいらっしゃるのですか?」
 祖父は既に、裸の上半身にシャツを羽織っていた。祖父のすぐ隣には、なぜか目をキラキラとさせた祖母が立っていた。
「ヴェラムンド伯爵、突然押しかけてしまってすまない。実は三日前、メイジーの町の養老院でメイサ嬢の施術で救われてな。今日は、その礼を伝えに来たんだ」
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