秘密の癒しチートがバレたら、女嫌い王太子の専属女官(※その実態はお妃候補)に任命されました!
 祖父の問いに、男性……えぇっと、たしかアズフィール様と呼ばれていたっけ。アズフィール様は、さらりと口にする。
 ちなみに、アズフィールという名前は、我が国の第一王子様と同じ。第一王子の命名後に、アズフィールという名の男児が貴族平民問わず一気に増えたという。きっと、彼の両親も王子の名にあやかったのだろう。
「なんと、そんなことがあったのですか」
「ええ」
「アズフィール様は各所の視察などに熱心だと折に触れて耳にしておりましたが、まさか養老院にまで足を運んでらしたのね。本当にご立派ね」
「三日前はちょうどメイサも養老院に行っていたから、鉢合わしたんですな。メイサの施術で救われたとおっしゃっていましたが、どこか痛めておられたのですか?」
 祖父たちは気さくに話しているが、それでもかなり敬意を払っているのがわかる。私は社交界からすっかり足が遠のいていたし、同年代の貴族子息や令嬢について疎い。
 ……アズフィール様って、どこの家の人なんだろう。
< 87 / 340 >

この作品をシェア

pagetop